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【3】
不意に、その広い胸に抱き寄せられて、息が止まった。
一瞬頭の中が真っ白になった後、自分の心臓がもの凄い勢いで早鐘を打つのと同時に、抱き締められた肩を中心に体中が一気に熱を帯びるのが分かった。
「せ、ん…せい…?」
「俺じゃ…桐島の悩みを解決してやれないか?」
シロ先生の広い胸の中で動けないでいると、不思議と自分が落ち着いていくのが分かった。
と同時に、俺ではない速い鼓動が、胸に当たる頬で感じるのに気が付いた。
「桐島が何を悩んでいるのか、何故泣いていたのか、俺じゃ頼りないかもしれないけど…教えてくれないか?」
「せん…せ……」
ドキドキと響いてくるシロ先生の鼓動に耳を傾けながら、友希也がこの先生を好きになるのが解る気がした。
俺にはない力強い腕
俺にはない温かい胸
俺にはない優しい瞳
俺が先生に敵う訳がなかったんだ。
俺はいつも友希也を追いかけていた。
シロ先生を追いかける友希也に追いつこうとして、追いついたと思ったらシロ先生に近づく友希也からまた一歩後ろに置いて行かれて。
まるで止まる事なく回り続ける秒針みたいだ。
ふと、先生の肩越しに教室の時計が目に入った。
あぁ、もうこんな時間だ…
そんな事を考えながら下ろした視線の先に、教室の入り口で俺達を見詰めたまま固まったかの様に立ち竦む友希也が、居た…
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