20人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前さぁ、助けてもらってありがとうくらい言えないわけ?」
「なんで高貴な僕があんたなんかに感謝しなきゃいけないんだ」
嫌味とかではなく本気でそう思ってそうなエルスに、セノは頭を抱えた。
すると、ふと床を見た時にエルスの足元にクモがもう一匹現れた。
「あ、クモ」
「ぎゃーっ! 早く外に追い出せ!」
相変わらず絶叫するエルスに、セノはにやりと笑って言った。
「ありがとうって言わなきゃ嫌だ」
「なに馬鹿なこと言ってるんだ! 早く助けろ! 王子に言いつけるぞ!」
「ほら言ってみろ。簡単だぞ? ありがとう、だ」
ニヤニヤしてエルスを防寒するセノに、ついにわがまま坊っちゃんは音を上げた。
「うぅ……ありがとう! ありがとう、だ。ほら言ったぞ!」
「よくできました」
セノはエルスの頭を撫でると足元のクモを掴み上げて、先程と同じように窓から出してやった。
「あんたいま、クモを触った手で僕の頭を撫でたな!?」
「細かいこと気にすんなって」
エルスのあまりの剣幕に、セノは大笑いして腹を抑えた。
それにエルスは頬を赤らめて、「バカが」と小さく罵った。
最初のコメントを投稿しよう!