見習い神官の日常

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「お前さぁ、助けてもらってありがとうくらい言えないわけ?」 「なんで高貴な僕があんたなんかに感謝しなきゃいけないんだ」  嫌味とかではなく本気でそう思ってそうなエルスに、セノは頭を抱えた。  すると、ふと床を見た時にエルスの足元にクモがもう一匹現れた。 「あ、クモ」 「ぎゃーっ! 早く外に追い出せ!」  相変わらず絶叫するエルスに、セノはにやりと笑って言った。 「ありがとうって言わなきゃ嫌だ」 「なに馬鹿なこと言ってるんだ! 早く助けろ! 王子に言いつけるぞ!」 「ほら言ってみろ。簡単だぞ? ありがとう、だ」  ニヤニヤしてエルスを防寒するセノに、ついにわがまま坊っちゃんは音を上げた。 「うぅ……ありがとう! ありがとう、だ。ほら言ったぞ!」 「よくできました」  セノはエルスの頭を撫でると足元のクモを掴み上げて、先程と同じように窓から出してやった。 「あんたいま、クモを触った手で僕の頭を撫でたな!?」 「細かいこと気にすんなって」  エルスのあまりの剣幕に、セノは大笑いして腹を抑えた。  それにエルスは頬を赤らめて、「バカが」と小さく罵った。
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