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ヤイルはにやにやとしながらエルスの前に立つと、エルスの頭上でその瓶を傾けた。
エルスはその泥が肌を溶かすほど強力な作用を持つと知っているため、死ぬとまでは行かなくても大怪我を負うだろうことは予想できた。
「本当にそれは危ないんだ。やめてくれ」
涙目で懇願するエルスを気にもとめず、ヤイルはさらに瓶を傾けた。
すると、突然、横から走ってきた何者かがヤイルの体を突き飛ばした。
「ぎゃーっ、なにをする!」
瓶の中身を地面にぶちまけながらわめくヤイルを男は抑え込んで叫んだ。
「エルス、無事か!?」
彼はセノだった。
セノのあとに続くように王子たちも歩いてくる。
それを見てヤイルは顔を真っ青にした。
「君が私の可愛いエルスをいじめているやつか」
「お、王子!? 僕は何も悪くない! 何もしていない!」
言い訳を繰り返すヤイルを王子は冷たい目で見下ろす。
エルスは取り巻きたちのゆるんだ拘束を振りほどき、王子の方へ駆け寄った。
「王子! いつもこの時間には来ないのに、なにかあったのですか」
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