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エルスは自分の頬が熱くなるのを感じながら、セノから顔を背けた。
「さて、洗濯するんだろ? 手伝うよ」
「あんたが手伝わなくたってこれくらい出来る」
セノは彼の耳が赤くなっているのを愛しげな目で見つめていた。
それから、セノは毎日のようにエルスの元を訪れた。
はじめの頃の彼は王子とともに神殿を訪れていたが、次第に一人で神殿内を自由に出入りするようになった。
セノがエルスの元を訪れる回数が増えるごとに、ヤイルの機嫌は悪くなっていった。
ヤイルは神官長にこっぴどく怒られたが、しばらく上位神官の監視がつく程度で許された。
これも神殿が治外法権であり、王家と並ぶほどの権力を有するおかげであった。
ある日の午後、エルスは神殿内でセノの姿を見た。
声をかけようと彼に向かって手を伸ばしたが、すぐにそれを引っ込めた。
なぜなら彼が珍しく真剣な表情をしていたからだ。
エルスはいったいどこへ行くんだろうと思って彼のあとをついていった。
セノは速歩きで神殿の奥へと突き進んでいく。
エルスのような見習い神官や低位の神官は普段入ることがない場所だ。
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