聖なる神子様

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 神殿の奥には個別で従者を雇っているような高位神官たちや神官長の部屋があるのだ。  やがてセノはある一つの部屋の前で足を止め、ドアをノックした。 「チカ、俺だ。話がしたい」  するとドアは内側から開かれ、中から一人の美少年が姿を現した。  彼がチカという人物だろうか。  少年の肌は雪のように白く、髪も瞳も驚くほど深い漆黒だった。  少年はセノの首に腕をかけ、ぎゅっと抱きしめた。 「待ってたよ、セノ。早く中に入って」 「ああ」  当然のようにセノは彼を抱き返して、そのまま部屋の中へ消えていった。  それをエルスは廊下の影からこっそり見ていた。  なぜだか急に胸が苦しくなって、手が震えた。  あの少年は、セノの恋人なんだろうか。  気分が悪くなったエルスは長いことその場にしゃがみこんでから、やがて呼吸を整えて自分の仕事に戻っていった。  一時は予想外の場面を目撃してしまい心乱されたエルスだったが、数時間後には気力がもどっていった。
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