運命の出会い

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 最初は魔術騎士団の仲間たちも、ログレース公爵家だから大層すばらしい魔術使いであろうと期待の目で見ていたが、エルスが絶望的に魔術が使えないことを知ると疎ましそうな目で見るようになった。  エルスもなぜ公爵家である自分が魔術を使えないのかと癇癪を起こし、ますます魔力を失っていった。  それを見かねた魔術騎士団長でもある長兄が、彼はここにいてはよろしくないと判断してついにクビを宣告したのだった。  すっかり働く気を失っていたエルスは、しばらく実家でのんびり無職生活でも楽しもうかと思っていた。  しかし長兄は続けて言った。 「魔術が上達するまで我が家の敷居はまたがせないと父上はお達しだ。それまで神殿で神官見習いとして修行を積んできなさい」  情け容赦なく魔術師塔を追い出されたエルスは、他に行く宛もないので仕方なく神殿へ向かうことにした。  着の身着のままやってきたエルスを神官長は冷たい目で神殿に迎え入れた。  伝説の聖剣・シルドヘッドを祀るこの神殿は、テレオノーラ王国でもっとも大きな礼拝堂を持っている。  そんな神殿でエルスは見習い神官として働くことになったのだ。
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