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(だいたい、なんで僕がセノなんかのことを考えなくちゃいけないんだ。僕には大事な使命があるというのに! そう、魔力を取り戻してこんな最低な神殿から早く出ていくんだ!)
やる気がみなぎってきたエルスは猛烈な速さでその日の仕事を終わらせ、余った時間で神殿内の図書室へやってきた。
すると、決して広くはない図書室にひとりの先客が居た。
数時間前にセノと抱き合っていた黒髪の美少年が、窓辺に腰掛けて一冊の絵本を読んでいたのだ。
エルスは彼の姿を目にした時に思わず後退りしてしまったが、よく考えれば彼を気にする理由なんてないと思い直して足を進めた。
(どうしたら魔術が使えるようになるのか、あらためて調べなおそう……)
そう思いながら書棚を眺めて参考になりそうな文献を探す。
エルスははじめての魔術という、いかにも子供向けそうな本を手に取り中を見た。
『魔力とは、清い心を持つ人々に女神が与える愛の総称です。女神は邪な心を持つものに愛を与えません。もしあなたが魔力を得たいと願うなら、毎日神に祈り、周囲の人に優しく接し、自然に感謝しなさい』
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