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その神子は一本の剣を掲げて言った。
この剣は女神が邪竜を討ち滅ぼすために作ったものである。
ただし誰にでも扱えるわけではない。
聖剣を引き抜けるのは、勇者となる素質を持ったものだけだ。
それから国は勇者探しを始め、ようやく一人の青年が見つかった。
彼は勇者として旅立ち、様々な仲間と出会い、なんだかんだ事件が起きつつも邪竜の元へたどり着いた。
最終的に邪竜を討滅した勇者は、国に帰って当時の王女と結婚して王家の婿となった。
どこにでもあるごく普通の昔ばなしだ。
「これのどこが魔術のヒントになるというんだ」
「読んでてなにか感じるものとかない?」
「普通の絵本だろう。僕が子供の頃、父上に何度も読み聞かされた」
「おかしいなぁ……。じゃあ、もしも君がそこに出ている邪竜の生まれ変わりだと言ったらどうする?」
「それは冗談だとしても笑えない」
エルスは絵本を勢いよく閉じ、投げるように少年に返した。
その時、突然、二人が立つ場所の近くで窓ガラスが爆発した。
「なんだ!?」
図書室には煙が充満し、一歩先も見えないほどになった。
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