聖なる神子様

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 エルスは煙を吸わないように口元を抑え、辺りを警戒した。  しかし何も見えず、近くで爆発音を聞いたばかりの耳は遠くなっていった。  そんな中でも誰かが窓から飛び出すような足音は聞き取ることが出来た。 「くっ……何が起こってるんだ……!」  先程までそこにいた少年の声が聞こえない。  彼は無事なのか。  エルスはどうにか割れたガラスだらけの窓辺を手探りで捜索した。  しかし彼の姿はどこにもなかった。  やがて煙が薄まっていき、爆発音を聞きつけた神官たちが図書室に集まってきた。  そこには手のひらを傷だらけにしたエルスと、粉々に窓が割れた図書室だけが残されていた。
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