邪竜の血

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 神官に一言礼を告げ、エルスはセノを追いかけるように図書室を飛び出していった。  エルスは当てもなく神殿の中を走り回ってセノの姿を探した。 すると、図書室のある建物の裏側で誰かが言い争う声が聞こえてきた。 おそるおそる様子を伺うと、そこにはセノや王子、近衛隊員たちが一人の男を取り囲んでいた。 よく見ると、囲われている男はあの鼻持ちならない男・ヤイルだった。 「お前のせいでエルスが怪我をしたじゃないか! いい加減にチカの居場所を吐け」  セノはヤイルの腹を思いっきり蹴り上げた。 ヤイルは腹を抑えて地面にうずくまっている。 「セノ、乱暴はよくない。ここは私が尋問をしよう」  王子がセノを止めて前へ出る。 ヤイルの前にひざまずくと、彼の頭をつかんで懐からひとつの小瓶を取り出した。 「これは邪竜の血を混ぜて作られた王家秘伝の毒薬だ。飲んだらもう二度と君は魔術を使うことができなくなる。いつか魔術騎士団に移籍することを望んでる君にとっては、最高の拷問だろうね」  王子はにっこりと笑って小瓶の口を開けた。 「さあお飲み」
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