邪竜の血

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慌てて呼吸を止めようとしたが、もう遅い。 怪しい粉がエルスの体内に侵入し、やがて目の前は真っ暗になった。  目が覚めると、エルスは怪しい魔術陣が描かれた部屋の中で横たわっていた。  手足は縄で縛られており動けないが、気を失う前に噛まされた布は外されていた。 「ここは……?」 「おはようエルス。いい朝だね」  後ろから声をかけられ振り返ると、そこにはチカが似たような格好で横に寝転んでいた。 「しかし、どうして君まで捕らえられているんだろう。こんな展開なかったはず……」  チカは一人でぶつぶつ呟いている。 それをエルスは不気味そうに見て、なにか脱出に使えそうなものはないか辺りを見渡した。 都合よくナイフが落ちているなんてことはない。 わけもわからず縛り上げられて、いったい何をされるのかと不安だった。 しばらくすると部屋の扉が開いて誰かが入ってきた。  エルスはその男の顔を見て驚いた。 彼はかつて、ログレース家で執事として働いていた男だったからだ。  キーシャという名のその男は、夜な夜なログレース家の家財を荒らしてどこかに売っていた。
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