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「エルス、明日からはもっとも下っ端の見習い神官として働いてもらう。
まず起床は太陽が登る前。支度を整え礼拝堂に集まって、日の出とともに祈りを捧げる。
その後は先輩たちに仕事を教えてもらって、雑用をしてもらう。
くれぐれも問題を起こさないように」
神官長は口早に伝えると、一人の神官を呼んでエルスに部屋を案内するよう申し付けた。
呼ばれた神官の名はヤイルというらしい。
エルスより身長が高く、派手な金髪と碧眼を持つ、エルスに負けず劣らず派手な男だった。
ヤイルは神官長の前ではにこやかにエルスに挨拶したが、神官長の部屋を出ると途端に顔をしかめた。
「ふん、お前が魔術が下手すぎて魔術騎士団をクビになったエルスか」
「そうだけど、なんか文句でもあるわけ?」
「わざわざ公爵家のコネで入れてもらったくせに、結局追い出されて間抜けなやつだな」
高慢そうに顔を歪めて笑う男に、エルスもむかっときた。
「その公爵家の息子である僕に、そんな口きいていいと思ってるわけ」
「ここがどこだと思ってるんだ。治外法権の神殿内で、お前は見習い神官。そして僕はお前の先輩。立場をわきまえろよ新人」
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