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「性格悪いなぁ、ヤイル先輩」
嫌味を言い合っているうちにエルスの部屋の前に着いたらしい。
ヤイルは扉を指差して「あれがお前の部屋だ」と言った。
「くれぐれも寝坊はするなよ。あと僕に口答えするな」
「はいはい。案内ありがとうございます」
不機嫌そうに去っていくヤイルの背中を見送り、エルスは自室の扉を開いた。
「……なんじゃこりゃ」
エルスは部屋の中に入ると思わず両手で口をおおった。
室内はあちこちにクモの巣が張っている。
ベッドはボロボロでかび臭く、机はホコリまみれ。
「最悪だ」
そう呟いて、エルスは今日一日持って歩いていた小さな荷物を部屋の隅においた。
エルスは家事なんてものをしたことがない。
だが、この神殿には侍従どころか、エルスより立場が低いものなどいないのだ。
エルスは仕方なく自分で掃除することに決めた。
部屋を見渡すと、奥の方にほうきと雑巾とバケツが捨て置かれていることに気づいた。
かつて誰かがこの部屋を掃除して、そのまま置いていったのだろう。
これらはいったい何年前から放置されているのだろうか。
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