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クモの巣をかき分けてバケツを手に取り、まずは水をくみにいくことにした。
神殿内には大きな噴水が設置されており、その水は人々が自由に利用できるようになっている。
エルスは噴水の前にしゃがみこむと、バケツいっぱいに水をくんだ。
その重くなったバケツを持ち上げようと力を入れた時、横から伸びてきた手が先に軽々とバケツを取り上げた。
エルスはバケツを奪った相手を振り返ると、思わず飛び上がった。
「王子! お久しぶりです」
そこには近衛隊員をずらりと引き連れたテレオノーラ王国の第一王子であるイリエル・ヴィ・ドラン・テレオーラが立っていたのだ。
イリエル王子はログレース家の長兄と同い年で、幼い頃から家族ぐるみで仲が良かった。
エルスにとって王子は憧れのお兄様であり、自分を慕ってくるエルスを王子もまた溺愛していた。
王子は礼をするエルスに微笑んで話しかけた。
「やあ可愛いエルス。どうして君がこんなところで水をくんでいるんだい?」
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