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王家の近衛隊といえば見目麗しく、腕も立つイメージがあるが、この男はどう見ても容姿が周囲のワンランク下だ。
そんな見た目のハードルを飛び越えるほど腕が立つのだろうか。
エルスは失礼なことを考えながらも、バケツ持ちが出来たのは素直に嬉しかったので王子に感謝した。
「ありがとうございます王子。では彼を少しだけお借りいたします」
「好きなだけこき使ってやってくれ。セノ、私の可愛いエルスに傷でも作ったらどうなるかわかっているだろうな。今日の仕事はもういいから、エルスの手伝いが終わり次第直帰しろ。また会おう、可愛いエルス」
王子は物騒なセリフを吐きながらエルスの頭を撫でると、近衛隊を引き連れ神殿の奥へと消えていった。
エルスはバケツ片手に置いていかれたセノを見た。
「それ、僕の部屋までよろしくね」
相手の返事も聞かずにエルスは自室に向かって歩き始めた。
彼の後ろをセノは水の入ったバケツとともに無言で付いていった。
それがエルスとセノ、二人の運命の出会いであった。
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