卒業

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「あの後、家でも警察でもめっちゃ怒られた。でも、瀬戸のおかげで変なことにならなかったんだと思う。」 「俺はただ・・・当たり前のことを言っただけで」 「その当たり前のことすら分かってなかったんだから、助かってるよ。」 相澤は、ケラケラと笑った。 「・・・うちの周りってさ。万引とか喫煙とか、そういうのばっかでさぁ・・・。バカみたいにつるんでても、何となく生きた心地しなかったんだよね。」 「そうだったのか・・・?」 「そんなもんよ。その場では楽しいかもしれないけど、心から楽しいって感じではないっていうか。その点、私がどんな馬鹿な話しても、瀬戸はノリ悪くついてきてくれた。」 「ノリ悪くは余計だ。」 ――― 『音楽作りたいんよ。私。』 よく分からない歌詞や、次々と出てくる小洒落た食べ物など、混沌としたジャンルを話す相澤が、初めてそんな話をしたのは、秋の進路相談時期だった。あの日と同じ西日が、彼女の右頬に差し込んだ。 『東京行って、現場で働きながら、音楽の勉強したい。うちの家、多分金銭援助しないだろうし。』 一つ一つの言葉を噛みしめるようにつぶやく。決して口数は多くなかったが、凛とした視線が彼女の決意を物語っていた。 『瀬戸はこの先どうする?』 『・・・俺は・・・まだよく考えてないかな・・・』 『そっか』
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