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静視点
喉の渇きで目が覚めた。部屋の明るさからして6時にもなってないだろう。それでもお腹も空いたからベッドから降りることにする。
外観は石造りの古風な館。9年前まではヤシオとアキヒメ、トキワとアサヒメの4人で住んでいて、俺は初めて遊びに来た時すぐにここが好きになった。
10歳になってやっとここで暮らせるようになって、その時に俺の父さんが全部屋のバスルームを新しくしてくれた。
ナイトテーブルに置いているリモコンのお湯張りボタンを押してから水を飲む。
もどかしい気持ちでグラスに注いで一気に飲み干す。それでも足りなくて水差しが空になるまで止まらなかった。もう真夏は越えたのに、なんでこんなに暑いんだろう?
お風呂に入って部屋着になって畑に出る。
今ここの作物を食べているのは俺をいれて3人で、一番に来た奴が水をあげることになっている。今日は俺だと思ったら地面が濡れていて、ホースを片付ける純の背中が見えた。
「おはよう」
振り返った純が驚く。
「おはよう。どうしたの、早いね」
「お腹空いて目が覚めた」
純の表情が少し明るくなる。
「食欲があるなら良かった。
最近元気なかったから、夏バテかなって心配してたんだよ」
純は身長だけは俺と同じくらいなのに、太さも体力も俺の半分くらいしかない。
「純がなってないのに俺がなるわけないだろ」
「なんだよ、心配してるのに」
ここで怒るんじゃなくて、拗ねるような落ち込むような感じになるのが純なんだよな。
「はは。ごめん、ありがとう」
竹で編まれたザルを2つ取って、1つを純に渡した。
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