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3.奪われる
一番に教室に入ると、昨日できなかった復習にとりかかる。
あの後、家に帰ってからもその日の出来事が濃く勉強にあまり集中できなかった。初めて撮ったプリクラがあんな事故とは言え、抱きつく写真が一番大きくプリントされていて嫌でも目に入って仕方なかった。つい、見てしまっては赤面を繰り返し、これでは変に意識してしまいそうだ。雑念を払うようにノートに目を移した。
やれば出来るもので、教室が騒がしくなるまで熱中していたらしい。
ハッと顔を上げて周りを確認すると、廊下側の窓に目が止まる。
鷹也が女の子の集団に囲まれて、歩いているのが目についた。困った顔をしていても、無下にはできず受け答えしている様子はさすがに同情する。ぼんやり、その姿を眺めていると偶然にも目が合ってしまった。目をとっさに逸らしたがワザとらしさはどうにもならない。
女の子の集団から逃げるように出てくると、こちらにやってくるようだった。
「和美、ちょっといい?」
騒がしかった教室が生徒会長の登場と、これまで関わりがなかった自分との関係が気になるクラスメイト達が一斉にこちらを注目しだした。視線を感じながら鷹也の背を押して廊下に出る。
「目立つだろう。それで、何か用だったか?」
「ん?とくには。助けてもらおうと思ってさ。女子たちがウザくて」
「そのキャラクターを生み出した鷹也さんの自業自得ですね」
「んー、そうだよな。けど、俺って顔が良いからさ、イメージ変えたって外でもたまにヤンキーみたいな女に声かけられるんだよな」
自分で言うとナルシストのようだ。だが、鷹也の場合は、俺から見ても整った顔をしているし、今の女子人気を思えば自分で言えるのも納得だ。
「…なら、恋人でもいれば学校でも、外でも気にしなくなるだろうな」
「恋人…確かにな。そろそろ考えてたとこでさ…そう言う和美ちゃんはどうなの。いるの?相手」
「いるわけないだろう。勉強の方が優先だ」
さっきから鷹也の目線が気になる。俺が見ていないのをいいことにずっとこちらを見ているのが視線で分かる。
「ふーん…作る予定は?」
「…あったらそちらを優先している。なんださっきから」
ついに、見てくる鷹也と目を合わせる。すぐに慌てたように視線を外すと、ため息をついた。
「ごめん、何でもない。そっか。…じゃ、俺、もう行くわ」
あきらかに様子がおかしい鷹也は逃げるように去っていった。あれでは、分かりやすすぎる。隠す気はないのか。気にしてほしいと思っているみたいだ。だが、ここで追いかけるほど暇でもない。
教室に戻り、残りの復習を再開した。
*
昼休み、数少ない友人、加藤学と机を並べて弁当を広げる。
「和美、最近、会長と仲良いのか」
学が俺と同じようなメガネを押し上げながら言う。あの騒ぎがあった後だ。すぐに気になって尋ねてきたようだ。
「…いや、仲がいいと言っていいのか…たまたま生徒会室に寄ったら縁が出来ただけというべきか…」
「曖昧だなぁ。まぁ、俺には関係ないからいいけど。…生徒会といえば書記の人のことは何か知ってるか」
書記…?何故、書記指名なんだ?何か個人的な接点があるのかもしれない。
だが、関わりがあるのは会長だけだ。他のメンバーは名前くらいしか知らない。
「いや、悪いな。他のメンバーは名前くらいでよく知らない。何かあるのか?」
「え?いや?知らないならいいんだ」
その日はその話題はここで終わった。のちに書記のことを聞いてきた理由が分かるのだが、それはまたいずれ。
「そういえば、お前が気にしていたシリーズの新刊がでてたぞ」
「えっ、昨日だっけ?助かる、チェック漏れだ」
サインペンを出し、手の甲に忘れないように文字を書いていく学の手を眺めながら、俺の頭はまだ朝のことを考えていた。
あれから鷹也を見かけていない。たまたまか、意図して避けているのか。それに、様子が変だったことは俺の目にも分かるのに、理由が分からない。俺が原因なのか?
分からない…本人に会うにしてもわざわざ会いに行くようなことでもない気がする。
「…学、お前は誰かと一緒にいる時に、動悸がしたり、羞恥を感じたりすることあるか?」
「はい?えーと、どういうこと?もしかして、恋愛の話?それなら俺はあるよ」
「れ、れんあい…」
「うん。気になってドキドキして幸せだったり苦しかったりする。そういう動悸ならある」
た、確かに…それに近いような。だが、相手は同じ男だ、これはありえるのか?
「…変なことを言うがあまり追求しないでくれ。相手がその…同性の場合はあるのか」
「え!!…あ、いや、ある、全然ある!」
間があったような。不安だが、あるならおかしいことではないのか?
「悪いな、変なことを言って。そろそろ今日の復習をしてくる」
借りた机を元に戻し、自分の席に戻る。ノートを出したはいいが、集中できなかった。
*
5分間の休み時間に、痺れを切らして鷹也のクラスに乗り込む決心をした。
中を覗くと読書している鷹也が見えた。西日に照らされてよけい綺麗に見える。
「三橋鷹也を呼んでもらえますか」
教室に入っていく女子を呼び止めて言う。
ほどなくして、鷹也がこちらへやって来た。
「どうしたの?珍しいね、教室まで来るなんて」
爽やかな甘いマスク…がやはり腹立たしく見える。うさんくさい笑顔も好きではない。
鷹也を屋上手前の階段の真ん中の踊り場まで誘導する。
「なになに、こんなとこまで連れてきちゃって。何かドキドキする」
ヘラヘラ笑ってるのも今のうちだ。そろそろ、自分の気持ちを白状してもらおうではないか。俺の真剣な表情に気づき、黙り込む。
「…どうかした?」
「た、鷹也さん…最近、貴方おかしいんですよ、俺は鈍感な方だが、それでも変だったことは分かった!貴方が変だと俺は気になって仕方ない!」
「えぇ?なにそれ…えーと…和美ちゃんは俺のこと好きなの?」
「え…」
「あ、いや、いい…そんなに気になるんなら教えてやるよ、俺が隠す気でいたのに、暴こうとしたのはお前だからな。文句言うなよ」
「どういう意味」
言葉を最後まで言うことは叶わない。鷹也に肩を掴まれて、壁に押さえつけられる。抵抗するよりも俺は鷹也のことが知りたかった。
「くそっ…抵抗しろよ」
熱を宿した目が俺を強く見つめている。動悸が激しくなる。押さえつけられた肩が少し痛む。
「たか…んむっ」
柔らかく熱い唇が押し付けられた。それがキスだと気づくのに数秒の時間が必要だった。
「おいっ、鷹也…何をっ」
「俺、女にモテたって意味ないの。男が好きだから」
「だ、だからそれとこれは…!」
「分からないの?自分が言うだけあるね、鈍感にも程があるって…ならこれならどう?」
いつの間にかズボンのボタンが外れていて、軽く引っ張られてあっけなくがズルっと膝まで下りた。
恥ずかしさに頭がおかしくなりそうで慌ててズボンを掴もうと屈むが、再び壁へ押し付けられる。
「危ないなぁ、ワザと何だから戻しちゃダメでしょ。恥ずかしいねぇ?和美ちゃんのココはどうかな?」
下着に手をかけられ、何をされるのか何となく分かってしまう。ゆっくりズラされて、不可抗力にも立ち上がってしまったモノが飛び出てきて、俺は恥ずかしさに目をそらす。
「おお!何だ、ちゃんと勃ってるじゃん、いい子いい子」
素手で触られて、肩が揺れる。
「あっ…やめろ…」
「はいはい、止めないよ。俺のしたいことさせてくれるんだもんね?お、先っぽ濡れてきたね。気持ちいいんだ?」
鷹也の指が先走りをぬりぬりと広げて、竿までヌルヌルにしていく。ぬるい快感にビクビクと痙攣が止まらない。もっと強い快楽を求めてしまいそうだ。「くちゅ」といやらしい音が耳に届いてくるようになる。段々と擦る速度が早くなってきて、その快楽にたまらなくなる。
「あっ、あ…ん、あ…だめっ」
「えろ…和美ちゃん、こんなエッチになっちゃうんだね。実は快楽に弱い?家でも結構1人でしてたりするの?…あー、俺もヤバい。一緒に擦ってい?」
俺の返事などは期待してないようで、一方的に喋っているようだ。鷹也は片手で自分のズボンに手をかけると、素早く前を開けると下着の中に手を入れて目的のモノを取り出した。
瞬間、息を飲み込む。
あきらかに自分とは大きさが違う。
「見て、和美ちゃん。和美ちゃんがえっちで可愛いから俺の、先走りでドロドロ」
言われなくても、俺の目はソコから釘ずけになってしまっていた。鷹也の先からトプっと先走りが溢れるのを見て、ゴクリと唾を飲み込む。
「触って…和美ちゃん」
耳元で囁くように言われて耳まで赤くなるようだ。
俺は好奇心に負けて、そっと触れてみる。ヌルりとした液に触れ、慌てて手を引っ込める。
「ちょっ!待って待って、汚くてごめん。でも、ちゃんと触ってほしい。和美ちゃんに触ってほしい」
「そ、それ…ズルい…」
鷹也に誘導されて、俺のと一緒に二本の竿を鷹也の手に合わせて擦る。俺と鷹也の先走りが合わさり、卑猥な音が大きくなる。響いて誰かに聞かれるのではないかと思えてならない。
「あっ、あー、きもち…和美ちゃん、イクとき言って。一緒にイこ」
俺は鷹也の出す声を聞いていたら何故か、冷静になってきて、鷹也の声に俺はだんだん興奮してきた。俺より鷹也の方が快楽に弱いんじゃないか。人のことを棚にあげて、何もしてないのに、ドロドロにしてる時点で明らかだ。
正直、可愛い。これではどっちが優勢だったのか分からないじゃないか。
なにより、鷹也の喘ぐ声は可愛かった。
「んん、あ、俺、もっ、でる…和美ちゃんっ…一緒がいいっ」
「俺も、出る」
同時に二人で果てると、疲れがすぐにやってきた。俺の肩に鷹也が寄りかかってくる。
「和美ちゃん…俺の気持ち伝わった?」
分かったかも、しれない。
「和美ちゃん…俺、和美ちゃんが好きだよ」
「あぁ」
「もう少し、このままでいて」
「あぁ…」
「和美ちゃん…俺、本当は…ずっと前から…」
「え?」
急に鷹也の身体が重くなり、寝息が聞こえ始め、愕然とする。仕方なく、ズボンのポケットにいつも入れてるハンカチで綺麗にして、背中に鷹也を乗せて保健室まで運んだ。
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