私も、それ好き

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 俺も自分のパソコンへ向かう。けれど、思い出すのは教室で見た藤沢の姿だ。彼女の姿ばかりが頭の中に浮かんできて集中できない。さっき、しっかりしなくてはと思ったばかりなのに情けない。  俺は足元に置いた鞄に目を落とす。持ち手のところに付いているのは子どもの頃から大好きなゲームに出てくるモンスターのマスコットだ。  彼女はもう忘れているだろうか。きっと忘れている。  たった一言だったから。 『私も、それ好き』  けれど、俺の耳にはまだ彼女の言葉が残っている。  高校に入学してすぐのことだった。  まだクラスにも慣れていなくて、特定のよく話すやつもいない。中学の頃から仲のいいやつもクラスにはいなかった。自分の立ち位置があやふやだった頃。  近くの席のやつが、このマスコットを見て言った。 『なんだよ、お前。まだそんなの好きなのか? 小学生かよ』  ゲラゲラ笑いながら、冗談のつもりだったに違いない。もしかしたら、そいつもまだ仲のいいやつがいなくて、話の取っかかりにしようとしたのかもしれない。  そうは思っても、その時は好きなものを否定されてカチンときた。  それでも言い返すのも面倒で、合わせて笑っていた。これから一年間、このクラスで過ごさなくてはいけない。
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