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彼女にとってはなんでもないことだったのかもしれない。その後は何も言わずに立ち去った。
俺はぼうっと彼女の後ろ姿を見送った。
それからだった。俺が藤沢を目で追うようになってしまったのは。
もちろん、マスコットを外すのは止めにした。
これを付けていれば、また藤沢と話せるチャンスがあるかもしれない。あれからずっと見ていてわかった。藤沢はあまりよく話す方ではない。自分から人に話し掛けているのを見たことがない。仲のいい友達とは楽しそうに話しているのを見るけれど。
だったら、どうしてあの時、俺に話し掛けてくれたのか。考えられるのは、本当に藤沢もこのモンスターのことが好きで声を掛けずにいられなかったってことか。
まさか、俺のことが気になっていたからなんて考えてしまったこともあるが、そもそもまだ入学したばかりでお互いのことなんて知らなかったはずだし、そんな夢みたいなことはあるわけない。
ともかく、彼女が好きだと言ってくれた大切なマスコットは、今日も俺の鞄で揺れている。
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