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土曜の夜、夕食も入浴も済ませ後は寝るだけ。寝転がってドラマの続きでも観ようとしていた矢先、親友の関根学が、飲みに行こうと俺を誘った。
時間も遅いからまた今度と断っても、関根はしつこく食い下がる。関根の目的地は、最近話題になっているらしい近所のカフェバーだ。どうせ飲んだ後は、宿代わりに俺の家に転がり込む算段だろう。
関根と俺は、やつが体調を崩し退職するまで同じ会社で同じ釜の飯を食う同僚だった。
退職後、関根はそれまで積み上げてきたスキルを捨て百八十度方向転換、居酒屋を始めた。値段もそこそこ酒も飯もうまいとあって、経営は順調、俺ももちろん常連だ。
その後もいろいろあって、結局関根は、店とウチの会社でのアルバイトの二足草鞋を履いている。
経営から調理場まで熟す忙しい身でありながら、他の人気店のウリや新規店舗の情報などにも常にアンテナを張り、敵情視察という名の遊びも怠らない精力的な野郎だ。
その関根が、俺を誘ってまで行きたいと熱く語るカフェバーとはどんな店なのか。興味が無いわけではないが、ごろ寝を決め込む気満々だったのに、と、面倒くささが先に立つ。
ひとりで行けよと拒絶しているにも拘わらず懇願するその熱量に、俺は根負けして重い腰を上げた。
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