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第一話 とにかく好き
気に食わない。
いつの間にかうちの猫に彼氏ができたようで、連日雄猫を連れてくる。
初日はうちのベランダで戯れる2匹が可愛らしくて、思わず快く迎え入れてしまったのだが、最近では俺が眺めていると、自分たちだけでいたいからというような感じで距離を置かれる。
うちのフレンドリーな猫と違ってその雄猫は妙に落ち着いていて、冷めた目つきを俺に向けてくる。
面白くないのでそのぶすっとしている雄猫を『ブス』と呼ぶことにした。
うちのリンちゃんはその大人びた雄猫に夢中なようで、いつも献身的に彼に毛づくろいしてやっている。
こいつも首輪をしているからどこかの飼い猫だと思うのだが、うちのこも自分の家に連れて行っているのだろうか・・。
重なり合うように二匹が寝ている。
ノートパソコンからふと目を上げると、私のソファベッドの上をうちの猫とよその猫が占領している。
先日は彼らが長い抱擁を情熱的にしているのを目にして、なんとも複雑な気分になった。
私の手は払いのけるくせに、よその猫には心を許しているなんて納得がいかない。
うちのカイくんが始終べったりなこの雌猫は、面長でプライドが高そうなので
『ざます』と呼ぶことにした。
なんだかカイくんに大切に思っているのは私だけじゃないと言われているみたいで焼きもちのような気持ちが湧いてくる。
誰、このおばさんというような態度をしてくるざますに、私は目上の人には礼儀正しくしなさいと言ってみたが、首を傾げられただけだった。
目と鼻の先に、ざますの飼い主が住んでいることを知るのはもう少し先のことになる。
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