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「じゃあわかった。君がみーちゃんだとして、一体何をしに来たの?」  すると女の子は唇をギュッ結び、どこか悲しげな表情になる。 「あの……おばあちゃんに会いに行ってあげてください。おばあちゃん、もうずっとあなたに会えなくて寂しがってるの……」  そうか、この子はばあちゃんのことを知っているんだ。 「ばあちゃんが俺に会いたいって言ったの?」 「……『また遊びに来ないかしら』って……」 「ふーん……。で、もう一度聞くけど、君は一体誰なの?」  優樹が疑いの目で女の子を見ると、彼女はあたふたしながらベッドから立ち上がると飛び降りた。 「何度も言うけど、私は猫のみーちゃんなの! おばあちゃんの気持ちは伝えたからね! ちゃんと会いに行ってよね!」 「えっ……ちょ、ちょっと……!」  優樹は慌てて引き止めようと手を伸ばしたが、バランスを崩してそのまま床に落ちてしまう。その隙に女の子は玄関まで走ったかと思うと、あっという間に部屋から出ていってしまった。  扉が閉まる音と共に起き上がると、優樹は意味がわからず頭を掻いた。  今のって何だったんだ? あまりにも唐突な出来事だったため、思考回路が追いつかない。  でもはっきり言えることはある。猫が人間に変身するとか、そんなことあるわけないじゃないか。あれはれっきとした女子高生だ。間違いない。  そうとわかれば、今日やるべきことは決まっている。とりあえずばあちゃんに会いに行こう。きっと何か事情を知っているはずだ。  それにしても……優樹は首を傾げた。あんなギャルっぽい見た目とは裏腹に、話し方はきちんとしていた。ああいう子、今まで周りにいなかったからな……なんだか調子が狂ってしまう。
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