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その席の左側には仕事帰りと思しきスーツ姿の中年男性。
しわくちゃのスーツに疲れ切った顔で今にも舟をこぎだしそうで半目だ。
右側にはギターケースを自身の前に置いた中年男性。
ヘッドフォンを耳に当て瞳を閉じている顔はリズムをとるように上下に揺れていて、その度にさらに右側に座る女性の肩に体が当たり嫌そうに細めた目を向けられている。
足は疲労していたが彼らの間の席には座る気になれず、ドアの前の端っこに立って壁にもたれることにした。
ドアが閉まり次の駅へ電車が走り出した。
電車に揺られしばらくしたところで、ケータイにメールが届く。
試験の不合格の通知だった。
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