16人が本棚に入れています
本棚に追加
少し広い店だったので、周囲に人が居ないのは幸いだった。
「うげ、うげ」
とおしぼりを噛んでいるノリ子先輩は声を出していた。
普段、人が絶対に発音しない声だった。
私はFが叩くノリ子先輩の背中を見た。
モカブラウンのコートの背中に岩塩の粉と、理解し難い手形が無数についているのが見えた。
関口が心配して私の隣に来て、ノリ子先輩を押さえるのを手伝っていたが、関口にその手形は見えていない様子だった。
Fはその手形の上を、岩塩を持った手の甲でドンドン叩く。
その度にノリ子先輩は、
「うげ、うげ」
と声を発する。
トイレから戻って来たカズミ先輩とサワ子先輩は、遠巻きにその様子を見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!