友人Fの本懐3 - 卒業の夜に -

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少し広い店だったので、周囲に人が居ないのは幸いだった。 「うげ、うげ」 とおしぼりを噛んでいるノリ子先輩は声を出していた。 普段、人が絶対に発音しない声だった。 私はFが叩くノリ子先輩の背中を見た。 モカブラウンのコートの背中に岩塩の粉と、理解し難い手形が無数についているのが見えた。 関口が心配して私の隣に来て、ノリ子先輩を押さえるのを手伝っていたが、関口にその手形は見えていない様子だった。 Fはその手形の上を、岩塩を持った手の甲でドンドン叩く。 その度にノリ子先輩は、 「うげ、うげ」 と声を発する。 トイレから戻って来たカズミ先輩とサワ子先輩は、遠巻きにその様子を見ていた。
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