友人Fの本懐3 - 卒業の夜に -

21/31

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
勿論、寺など完全に閉まっている時間だった。 タクシーを横づけしたFはインターホンを押して話をしていた。 直ぐに普段着の住職が出て来る。 そして私たちは寺へ入ろうとタクシーを降りた。 するとノリ子先輩が暴れ出した。 「嫌や、絶対に行かへん。こんな所行かへん」 と、殆ど叫び声。 それを無理矢理、私とFと関口で寺の敷地内に押し込んだ。 物凄い力だった。 関口の手の甲にはノリ子先輩の爪で引掻いた痕が残っていた。 中に入るとノリ子先輩は大人しくなり、フラフラとFに支えられながら歩いていた。 振り返ると青い顔をしたヨウ子先輩が、ノリ子先輩と同じ様な咳をしている。私はヨウ子先輩が握っていた岩塩を取り、ヨウ子先輩の後ろに回った。 「その子もやな…」 と住職が言う。 私は頷いて、ヨウ子先輩の背中を押して寺の中に入れた。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加