松若椿 17歳 行き先:東京都

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私は見てわかる通り年齢的には高校生なんですけど、1度も学校に行けていないんです。色々な病気で。昔から沢山病気があったので外を全く知りません。ずっと病室の白くて四角が並んだ天井を見ていました。とうとう余命宣告をされました。そんな人生なので動物園も行ったことなくてさっきはあんな感じで。この制服もどこの学校かわからないんです。髪だって、本当はないんですよ。それでも、ふわふわな茶色の髪の女子校生になってみたかったんですよね。複雑な気持ちですけど、私がイメージしている理想のJKになれて嬉しいですね。今回東京を指定したのは、私が東京出身らしいからです。しかもかなり都会の方の。なんて言うんだっけ、赤坂?とかいうところ生まれみたいです。私が見上げるのは白い天井じゃなくてビル群だったはずだったんです。新宿も上野もそこに向かうまでの道も首が痛くなるくらいのビルが沢山あるじゃないですか。タワーマンションって言うんでしたっけ。私の家はその最上階だそうですよ、本当は。そんな建物を沢山見てからじゃないと死にきれないと思ったんです。いい街ですね、東京は。 僕は何も詮索しなかった。大都会で贅沢に、幸せに暮らすはずだった少女が、自分が見るはずだった景色を見ようとしている。僕は何も詮索したくなかった。しないようにした。ただ一言、 「いつがその日で」 と聞いた。 「明日だそうですよ」 と彼女は最後のタピオカを吸い込んだ。
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