僕が助ける

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僕が助ける

僕の回りには、見渡す限り、猫、猫、猫。 ズラーッと並んでご飯を待っている。こんな光景が日常となった。 そんな珍しい光景が噂となり、山しかない何も無い場所に毎日、人が来る様になり、お供え物も沢山持ってきてくれて、ここの猫ちゃん達は食べ物に不自由しなくなった。 ある日の、日没も近くなった頃、普段では、もう人は1人も訪れない筈だか何やら遠くから若い女性が疲れた様子で歩いて来た。 何だか気だるそうな様子で元気無く、トボトボと歩いて来ると僕の前にしゃがみこんだ。 「あれっ、猫ちゃんは夕方になると居ないんだ~。まぁ仕方がないか夕方まで居ないよね。最後に噂の光景が見たかったなぁ。 はじめまして。貴方が、ねこ神様なのね。私の声は届いてる?私ね、ネットで調べたんだけど、この先に大きな橋があるじゃない?そこで今日人生を終わりにしようと思って来たの。酷い男に出会ってしまって、2人で幸せになろうと思ったんだけどね、上手くいかなくてさ、もう苦しいんだよね…。そんな時、男友達が気が紛れるかもしれないから今度一緒に此処に来ようって言ってくれて、本当にいい奴なんだよね。でもネットで見たら私の終わらせる場所にピッタリで抜け駆けってとこかな。もう、誰とも会えなくなるけど、これでいいんだ。全てに解放されたいから… ねこ神様の猫ちゃん、私の話聞いてくれて、ありがとう。これでも食べて。あっ、チョコなんて食べないかな?でも置いとくね。さようなら。」 その女性は目から溢れる涙を拭いながら話していた。最後に僕のお皿の上に、少しポケットに入れっぱなしだったっぽい溶けかけっぽい、チロルチョコひと粒をポンッと置いて立ち上がろうとした。 僕は金縛りにかけて立ち上がれない様にして少し神っぽさを出しつつ問いかけた。 心の声 (そなた、まず、ねこ神様が猫の缶詰が好きだと思うのではないぞ。ねこ神様は甘いものが大好きなのじゃ。だからチョコは大好物なのじゃ。あと、いちご大福も大好きじゃ。だが、少し溶けかけっぽくて、ポケットに長く入れていたように見えるチョコは何だか食欲を刺激しないのだが、まあ今日の所は、そなたに免じて許してやろう。 さて、本題に入るとしよう。何故、人生を終わらせるのじゃ。与えられた命じゃ。自分で終わらせる事は許されぬぞ。楽しいことも沢山出来るし、美味しいものも沢山食べれるし、好きな事なんでも出来るではないか。そなたは、そなたが幸せになる為の選択を何でも出来るのじゃぞ。辛いなら辛い状況から抜け出す選択をし、しっかり回りを見よ。そなたの近くには、そなたを誰よりも心配してくれて愛してくれている男が居るではないか。その幸せになれる選択を何故しない?そなたは気付いている筈じゃ。此処を教えた男が、その相手だということに。正しい選択をするのじゃぞ。そして、次に来る時は、その男といちご大福を2個持ってくるのじゃぞ。) 涙をボロボロ流していた、その女性は金縛りから解けると、暫く泣き続け頭を上げると話始めた。 「ねこ神様、ありがとう。私、幸せになる正しい選択をするから。そして、また此処に来るから待っててね。その時いちご大福2個持ってくるから。」 そう言うと先程、お供えした溶けかけの長い間、ポケットに入っていたように見えるチロルチョコを貪り食べた。 心の声 (えぇ~?お供え物じゃないの?ちょっと引くけども、まぁ、あんまり食べたくなかったし、まっいっか。) その女性は僕をチラチラ見ながら言った。 「やっぱり生きる為にはエネルギーが必要だからさ。さっき金縛りの時、言ってたじゃん。食欲刺激しないって。だから、いいでしょ。怒らないでね!その代わりに次に来た時、楽しみにしててね!またね、ねこ神様。」 そう言うと、ゆっくり立ち上がり来た道を帰って行った。 心の声 (なんだあいつ?弱いのか強いのか分かんないな。まぁ元気出たみたいだし良かった。それに次あの子が来るのが楽しみだ!今日も僕、神らしく様になってきたな!やっぱり僕って最高の神~!!)
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