潜入捜査と驚きの事実に

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潜入捜査と驚きの事実に

 伊敷(いしき)が座るテーブル席に、店の男性スタッフが一人の女性を連れて近付いてくる。そして…… 「こちら新人のマコさんです。伊敷さんにはぜひ紹介しておきたくて」    女性にしては背の高いスレンダーな美人が、挨拶を済ませると綺麗な笑みを浮かべ伊敷の隣に座った。彼女は伊敷のグラスが空いたのを確認し、すぐに新しいお酒を用意する。そんな品のある振る舞いと、細かな気遣いに彼はすぐにその女性が気に入ったようで。 「マコちゃん、君は良いね。綺麗で上品だ、俺の秘書にしたいくらいだよ」 「そんな、伊敷さんの秘書なんて私に務まるかどうか……」  そんな言葉で機嫌を取り、隙あらば彼女にボディタッチを試みようとする不埒な手をマコは上手に躱していく。颯真(そうま)高峰(たかみね)が予想した通り、伊敷は綺麗な女性とあらばすぐに手を出そうとする男のようだ。  自分がこの役を引き受けたのは正解だった、と心の中で彼女は思う。 「いやいやいや、マコちゃんならそこにいるだけで十分だ。君のような美人が秘書ならばきっと仕事場が華やぐだろうし」 「ふふふ、そうでしょうか」  よく言うな、とマコは思う。昼間に自分の事を役立たずな部下だと散々馬鹿にしたのは、誰だったかをもう忘れたのだろうか? もちろんそんな本音はおくびにも出さずに、彼女はニコニコと微笑んでいるのだが。 「なあ、マコちゃん……」
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