2071人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうでしたか、高峰さん?」
先ほどまで彼女が伊敷の相手をしていた店の斜め前、少し古びたビルの中にあるバーでずっと待っていたであろう颯真と花那が慌てて近寄ってくる。
余程心配だったのか、気が気じゃなかったというのが見てすぐに分かり高峰は小さく吹き出してしまった。
「な、何で笑うんですか? こっちはもの凄く不安だったのに」
「いや、だってねえ。私は颯真さんや花那さんよりも年上なんですよ? そんな子供のお使いでもあるまいし」
そう言って笑う高峰はまだ女性の姿をしている。いや、正しくは元々女性だったの方なのだが。
伊敷が行く店は女性が接客をしサービスする場所だと聞いて、最初は花那が行くと言って聞かなかった。だがそんなことを颯真が許すはずもなく、顔も知られているため高峰も却下したのだが。
他の方法を考えるより、伊敷から簡単に情報が引き出せそうだと思った高峰が自分が潜入すると言い出したのだ。
「でも、まさか……高峰さんが女性だったなんて」
「おや? 私は隠しているつもりはなかったのですが、涼真さんからお聞きにならなかったのですか?」
全く聞かされてないし、名前も中性的で男性だと疑わなかった。だが、こうして女性の姿を見ればなぜ男性と間違ったのかと自分を疑いたくなるほどの妖艶な美人で。
颯真と花那は改めてこの高峰 真実という人物が只物ではないと実感させられたのだった。さすがは涼真の信頼を得るだけのことはある。
最初のコメントを投稿しよう!