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篠ヶ原は穏やかだが仕事の出来る男だということが見た感じで分かる、どうしてこの男性があの伊敷の秘書なのか不思議なくらいで。もしかしすると伊敷の仕事のほとんどを、実は彼がやっているのかもしれない。
颯真がそう考えるのには、訳がある。この穏やかそうな男性が、涼真に教えられた要注意人物の一人だったからだ。もし兄にそう聞いてなければ、きっと疑うことなく篠ヶ原に良い印象しか持たなかっただろう。
「流石ですね、篠ヶ原さんは仕事の出来る方だと父からも聞いていました。今の自分に兄の代わりが務まるか分かりませんが、これからよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。颯真さん、そして花那さんとも良い関係が築けたらと思ってますよ」
二コリ、と浮かべられたその笑顔に悪意は感じないはずなのに。何とも言えない不気味さに颯真と花那は戸惑いながらも、なるべくにこやかな笑みを浮かべてその場をごまかした。
篠ヶ原は満足そうにその場を後にしたが、多分彼はこうして颯真と花那に出会ったことで何かを企み始めるはずだ。
「とりあえず、最初のアプローチは成功したみたいね。ここからは、慎重にならないと篠ヶ原さんは危険だわ」
「そうだな、次の事はまた兄さんを交えて話し合おう。高峰さんの方からの情報も一度きちんと整理したいから」
そう言って二人は秘書室へと戻る。調査とは別に社長である斗真を納得させるだけの仕事もしておかなければならない。結局、颯真と花那は夜遅い時間まで二人で協力し合い溜まっていた業務を片付けたのだった。
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