潜入捜査と驚きの事実に

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「そうか、やはり伊敷(いしき)専務はいざという時の身代わりにするつもりなんだろう。そうさせないためにも、しっかりと黒幕を捕まえる必要があるな」 「兄さんの言ってた通り篠ヶ原(しのがはら)さんは手強そうだ、彼が笑顔の裏で何を考えているのか全く分からなかった」  先日のバーで三人はまた個室を借りて、真剣な表情で話し合いをしていた。  人当たりの良い笑み、決して相手を不快にさせない気遣いをする篠ヶ原。そんな彼を褒める人間は多いが、悪口を言うような社員はほとんどいなかった。  もしろ颯真(そうま)はなぜ涼真(りょうま)が彼を怪しいと思ったのかが不思議なくらいで。それを涼真に尋ねると、彼は少し迷ったような表情の後で…… 「何て言うんだろうな、俺が篠ヶ原さんを疑った理由はちょっと変わってて。彼はね、仕事が出来過ぎるんだ。例えば彼が今まで経験のないはずの業務を頼んでも、その仕事内容を把握し完璧に仕上げてくる」  特殊な内容の業務でその部署の人間でなければ分からない筈の作業を、何故か篠ヶ原は一人で終わらせる事が出来るらしい。そんな中でも涼真が一番不審に思ったのは、篠ヶ原が会社のセキュリティシステムを操作できたことだ。 「セキュリティシステムについて篠ヶ原さんに説明したことなどないし、俺と父以外が操作した形跡もないらしいんだが。俺は一度だけ、彼がシステム内のデータ内容を盗み見している姿を見てしまったんだ」 「……そんな、そこには大切な企業の情報だってたくさんあるんでしょう?」  涼真の言葉に、颯真と花那はとても驚いた。あんなに穏やかそうな篠ヶ原が裏でそんな事をしているなんて信じられなくて。
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