潜入捜査と驚きの事実に

9/10
1977人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
「それでも篠ヶ原(しのがはら)さんが主犯格だとは言い切れなくて、だからこそ彼との接触は慎重に頼みたい。上手くいけば奴らを全てあぶり出すチャンスが出来るかもしれないからね」 「なるほど、兄さんは慎重にと言いながら大胆な事を考えるよな。そういうところは結構父さんに似てるのかもしれない」  感心しながら颯真(そうま)がそう話すと、涼真(りょうま)は「そうかな?」と苦笑いする。温厚な兄は父に似ているところなんてないと颯真は思っていたが、案外そうでもなかったのかもしれない。  花那(かな)はそんな二人の会話を楽しそうに聞いている。一人っ子で育った彼女には兄弟で仲良くしている姿が羨ましかったのかもしれないが。  義妹の真由莉(まゆり)は颯真を花那に奪われたと思い、仲良くする気など皆無で八つ当たり気味にしか話してこない。きっとそれは何年経っても変わらないだろう。残念だと花那は思うが、颯真を特別に見ている真由莉が相手では仕方ないのだ。 「さて、次に篠ヶ原さんに近付く機会を作るのはいつ頃が良いだろうか?」 「いや、今度は彼の方からのアプローチを待ってみるのが良いかもしれない。もしかしたら、あの人は……」 「……そうですか、ならばこういう作戦はどうでしょうか?」  先ほどまで颯真と涼真の話を聞いている立場だった花那が、珍しく二人の会話に口を挟んだ。花那は自分なりに考えた作戦を一生懸命、涼真と颯真に説明する。  そんな彼女の話を聞いた後で、また三人で話し合いを繰り返す。その日はバーの閉店時間までじっくりと今後についての計画を話し合ったのだった。
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!