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ピピピ……ピピピ……ピピピ……
突然颯真が机に置いたままにしていたスマホが鳴りだし、二人は慌てて距離をとる。深夜とまではいかないが、もうだいぶ遅い時間でもある。
いったい誰だろうとスマホを手に取り画面を確認した颯真が驚きの声をあげた。
「兄さん……?」
「え、もしかして涼真さんからなの?」
夫の言葉に花那も慌てて着信画面を覗き込む、そこには確かに涼真の名前と番号がはっきりと映し出されていた。颯真と花那は顔を合わせて頷くと、そのまま急いで通話ボタンを押した。
聞きたいことも言いたいことも沢山あるが、まずは彼の無事を確認したかったのだ。
「もしもしっ、兄さん! 今どこにいるんだ、体は大丈夫なのか?」
『…………』
颯真と違い涼真は子供の頃から少しだけ身体が弱く病気がちであった。それでも深澤カンパニーの後継者として、人一倍努力して彼はそれを認められていることを颯真は知っている。
だが大人になった今でも時々酷い熱を出したりすることもあり、そんな涼真を弟である彼は心配していたのだ。
焦るせいか颯真が涼真を責めるような強い口調になっていることに気付き、それを花那が優しく注意する。
「落ち着いて、颯真さん。そんな風に問い詰められたら涼真さんだって、貴方に言いたいことが言えなくなるわ」
「あ……そうだな、すまない」
彼女の言葉で少し冷静になった颯真が電話口で謝る、それが伝わったのかスマホから涼真の「ありがとう」という一言が聞こえてきた。
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