協力は必然で心は揺れて

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 颯真(そうま)の言うことはもっともだ。社内にそんな人間がいる状況で、次期社長の涼真(りょうま)が行方不明になれば余計に隙を見せているようなものだ。  少なくとも涼真はそんな事が分からないような男ではない、周りをよく観察して行動する彼ならそのような失敗はしないだろう。それならば…… 「わざと、なのか? 兄さんが家を出たのは」 「そうだ。深澤(ふかさわ)カンパニーの中で社長の次に邪魔になる存在、それは俺なんだろう。そのせいもあってか、俺の周りはかなり警戒されていて相手の行動が今だ読めないでいる」  涼真の言うことも分かる、つまりは相手も随分用心しているということなのだろう。特に斗真や涼真にその証拠を掴まれないように、と。  だが、涼真が家を出たところでそう状況が変化するとは思えない。いったい何のために兄が行方をくらませたのかと考えた時、父の斗真の言葉が頭をよぎった。 「まさか、俺を深澤カンパニーに入れるために?」 「そうだ、颯真にはあの会社の中で俺の代わりに情報を流している社員を特定して欲しいんだ」  涼真に出来なかったことを自分が出来るのだろうかと、颯真は不安になる。少なくとも颯真は深澤カンパニーにほとんど関わらずに過ごしてきた。  涼真と違い自分を信じてくれる部下がいるわけでもない、それなのに……
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