始まりは一本の電話から

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始まりは一本の電話から

 カーテンの隙間から漏れる日差しに眩しさを感じ、花那(かな)はゆっくりと瞼を開く。いつもとは違うカーテンの色や本棚の位置、シーツだって自分のお気に入りのものではない。   「そっか、私……」  隣でまだ熟睡している夫を見つめて花那はまた夢の中にいるような気分になる。  五年……お互いを理解し合う事もない結婚生活を送ったのに、離婚をするはずの日に二人の運命は大きく変わった。会話も無い様な関係だったのに、今はこうしてベッドを共にしている。  昨夜、二人は初めて結ばれた。深いキスを何度も交わして、時間を忘れるほど甘く激しく求めあったのだ。だがこうして朝になれば少し気恥ずかしい気持ちもあって、どうしても顔がにやけてしまいそうになる。 「それにしても颯真(そうま)さんて、結構……」 「俺が結構、その続きは何?」  昨夜の颯真を思い出し顔を赤くしていると、隣で眠っていたはずの夫からそう問い詰められる。まさか聞かれてるとは思ってもいなかった花那は、驚いて彼から距離を取ろうとする。  しかしそんな事を颯真が許すはずもなく、簡単に花那は彼に組み敷かれてしまった。 「もしかして、俺が結構スケベだとか悪口言おうとしてた?」 「えっと、そんなんじゃなくて……」  思っていたことをズバリ当てられて花那は目を泳がせる。そう、颯真は花那が思っていた以上に丁寧に優しく……そしてひどく焦らすような抱き方をする男だった。  昨夜だけで花那は何度啼かされ喘がされて、絶頂へと導かれたか分からない。
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