束の間の安らぎと不安に

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「急な宿泊予約、ですか? でも今は空いているお部屋は……」 「ええ、でも一部屋でも構わないからって。瑛太(えいた)くんの話では結構な人が宿を探してるらしくて、あちこちにお願いしてるらしいの」  旅行シーズンという事もあり、このペンションもほとんどの部屋が予約で埋まっていることは花那(かな)も知っていた。それでもどうしてもと言われれば名賀(なが)美海(みなみ)は出来るだけのことをしようとするだろう。  それでも彼女がここまで迷うということは、やはり相当難しいということなのかもしれない。悩んだ様子の美海に花那は…… 「空いているお部屋、私が泊まれるように準備をします! 他にやることがあれば何でも言ってください、困っている人を放ってはおけませんよね」 「花那さん、いいの?」  美海だって名賀だって、自分と同じ気持ちのはずだ。そう考えた花那はすぐに部屋の掃除のための準備を始めた。名賀達が頼む仕事内容と別にそれくらいなら頑張れば何とかなる、そう思って彼女は動き出した。 「はい! 私に出来ることはやりたいんです、これでも体力には自信があるのでこき使っていいですよ?」 「もう! お言葉に甘えてそうさせてもらっちゃうんだからね、文句なら後でいくらでも聞くから」  花那の様子に美海も笑って自分のやるべき事を再確認し始める。食事内容なども考え直す必要があるかもしれない、美海はキッチンへ花那は空き部屋のある二階へと急いだ。  しばらく使っていなかった空き部屋は埃が被っていたが、家具や家電は問題なく使用出来そうだった。窓を開けると換気を済ませ、端から丁寧に掃除を進めていく。  そんな花那には余計なことなど考えている暇もなかった。
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