13. 浮いたり沈んだり

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「それで、これ、お詫びと言っては何なんですが……」 夕食の合間に仕込んでおいたゼリーをひとつずつ出すと、とりわけ楠本が歓喜の声をもらした。 「わー、ゼリーだー! ブンちゃんが作ったの?」 「こんなことぐらいしかできないんで……」 遭難騒ぎを起こしたことの禊が、これで済んだとは思わないが、それでも何かせずにはいられなかった。 みかんの缶詰とゼラチンを煮て、小屋の外に出しておいたゼリーは、外気に晒されて、ちょうどよく固まっていた。 みんなが喜んでいるのを見て、文太はひとまず胸を撫で下ろし、やっと箸を持った。 「まあでも、今回のことでヒヤリとしたよ。古株が多いから、今まではなあなあになってたけど、これからは外出先を必ず全員で共有しよう」 「共有って〜?」 岳からの提案に、楠本が問いかけた。 「小屋の外に出る時は、行き先と戻り時間をホワイトボードに書くこと。電話しに行く時とか、近所の外出でも」 「じゃあ、梓さんのテント行く時も?」 楠本がいたずらっぽく言った時、文太は汁椀を傾けたまま固まってしまった。 奈良も同様に、気まずそうにしている。 岳だけが顔色ひとつ変えず、理路整然と続けた。 「そうだな。小屋の外に出る時は原則そうしてほしい。テン場だろうが、アズのところだろうが」 「だってさー、ブンちゃん!」 楠本に追い討ちをかけられ、文太は視線をどこにやったらいいのかわからなかった。 とりあえず、奈良の方は向けない。 口角を結んだまま固まっていると、楠本が手を叩いて笑った。 彼から受ける禊は、ある意味どれよりも応えたのだった。
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