14. ほのかな熱

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「俺はもう、誰かと恋愛するつもりはない。お前とも、お前以外とも」 「うん。知ってるよ」 「だからもう……」 タオルに覆われた梓の上半身から、わずかに指先がのぞいている。視線でたどると、指先だけでなく彼の全身が震えていることに気づいた。 文太は思わず、その肩を引き寄せた。 それから、許諾も得ずにキスをする。 彼の唇はストーブの火に炙られて、ほのかに暖かかった。 「……すみません、魔がさしました」 抱き寄せたまま、文太は言った。 対し、梓は腕のなかできょとんとしている。 「梓さんは、のにね」 先日の彼からの言葉になぞらえて言うと、とうとう目を逸らしてしまった。 「お前、案外性格悪いな」 「悪いですよー。なかなか諦めないしね。雷鳥の皮被ってるけど、中身はハンターですから」 「なんだそれ」 肩から落ちかかっているタオルをもう一度巻きつけてやると、タオルごと抱き締め直した。 意外にも彼は抵抗せず、大人しく文太の腕のなかに収まっている。 その瞳はやはり不安定に揺らいでいたが、どうも暗いばかりではない——そう思いたかった。 「未来と間違えてるわけじゃないから」 「え?」 「文太は文太だって、ちゃんと思ってるよ」 梓ははっきりとそう言った。 おそらく、彼はこれが伝えたくて食堂の前に立っていたのだろう。 「うん……」 頬を撫でて、もう一度キスをする。 梓はやはり、抵抗しない。 その拒絶でも受容でもない、瞳の揺らぎが伝播するように、ざわめきが体中に広がっていった。
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