17. 告白

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✳︎ 木の軋む音が、梓の言葉の隙間に、相槌のように入り込んだ。 彼は途切れ途切れに、時折詰まらせながらも——喋ることはやめなかった。 卒業後も、見つからなかった兄の残りの体を捜索しに、この周辺を歩いていたこと。 そこで、岳の父親である晋太郎や匠、岳に出会い、親切にしてもらったこと———— 文太は、梓にいま打ち明けられて初めて、ふたりが最後に過ごした場所が、奇しくもこの如月避難小屋だったという事実を知った。 当時は幼かったから、兄が遭難した詳しい経緯や場所まで把握していなかったのだ。 また、梓はこうも言った。 いくら探しても、もう兄の残りが見つからないだろうことはわかっている。 それでもまだ山に入り続けているのは、未来のためじゃない。 もはや、自分を保つための手段なのだと———— 一通り吐き出すと、梓は力尽きたように俯いてしまった。 眠ってしまったのかと思い顔を覗き込むと、まぶたはまだ開いていて、こちらの膝あたりを捉えていた。 「よりによってこの小屋に、未来の服着て現れやがって……」 恨めそうに言われ、文太は身をすくめた。 「やっぱり、根にもってますか」 梓は鼻を鳴らし、脚を組んだ。 普段口数の少ない彼がここまで話すことは滅多にないから、疲れたのだろう。 全身の体重を預けるように、ぐったりと柱にもたれかかった。
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