17. 告白

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「なんであの時、未来のふりしたんだよ」 ここで最初に会った時、梓が寝ぼけて兄と文太を混同した。その時、否定もせずに話を合わせたことを指しているのだろう。 「深い意味はなかったんです。ただその方がなんとなく、梓さんが救われるような気がして。でも、すぐ後悔しましたけど」 「後悔って?」 「兄に重ねられるのが嫌だったというか。俺、最初からたぶん梓さんのこと好きだったんだろうね。兄ちゃんのまぼろしとしてじゃなく、俺を俺として、最初から知ってほしかったなーって」 梓が短く息を吐きながら笑う。彼の表情が解れると、文太はやっと少しだけ安心できた。 あぐらをかき直した際、どさくさに紛れて肩をぶつけた。 触れ合ったままでいても、梓は拒まなかった。 「文太と未来は全然違うけどな。パッと見は似てるけど、中身はなにもかも全く違う」 「北極と南極みたいな感じ?」 「お前、北極と南極の違いわかってんの?」 「……ペンギンがいるかいないか」 梓はまた、声を上げて笑った。 その手を取りたかったが、文太は拳に力を込めて堪えた。 彼の左手には特別なものが宿っている——それを知ってしまったからだった。 「俺、告白の仕方間違えちゃったね……」 「なにが?」 彼に告白した時、朝日を見ながらキスをして、左手を握った。 知らなかったとはいえ、兄とまったく同じことをしていたのだ。 結果、梓の特別なもののなかに割り込み、ひどく混乱させてしまった。 だから文太は、手ではなく足の親指で、彼の甲をなぞった。
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