2. ヒュッテ霜月へようこそ

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岳と楠本、奈良、そして文太。ヒュッテ霜月の従業員は、男ばかり、たった4人だ。 大昔は女性スタッフが入っていたこともあるらしいが、ここ最近はずっと男性ばかりらしい。 その事実を知らされた時、文太は心の中でため息をついた。 間宮め、なにが「いい出会いがあるかも」だ。 スタッフが男ばかりだと事前に知らせたら、引き受けないとでも思っていたのだろうか。 もしそうだとしたら心外だ。 そりゃ、そういう期待がなかったと言ったら、多少は嘘になるけれども——— 「女の子いなくてがっかりしたでしょ」 まるで心のうちを見透かしたかのように、楠本がにやける。 そんなに顔に出ていたのだろうか——文太は両頬で手を挟んで、表情筋をほぐした。 「でもまぁ、男同士だと気楽よ? 俺らなんてもう長いこと、1年の1/3は異性と切り離された生活してるからね。今さら女の子入ってきたら、それはそれで面倒かも」 楠本のたこ焼きのようにまん丸い頬を見つめながら、文太は漠然とした疑問をもった。 彼の口ぶりから察するに、文太以外のメンバーはもう長いこと固定化されているようだ。 ヒュッテ霜月の後継者である岳はともかく、まだ20代らしき風貌の奈良と楠本は、いつから小屋番として働いているのだろう。 7月から10月末にかけての営業期間中、ずっと山にいられるということは、彼らも間宮と同じフリーターで、夢追い人かなにかなのかもしれない。 「はい、じゃあ忙しくなってくる前にちゃっちゃとオリエンしてくからね。まず受付ー」 楠本は突然、声色を変えて、手を一度叩いた。 そして、小屋のあちこちを説明して回り始めたものだから、文太は慌ててメモを出して、その後を追った。
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