20. 休憩

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「梓さん、いれたい……っ」 梓の無言を肯定と受け取り、文太は彼の脚を抱えた。 どういう体位で、どの程度の力を加えるかなどわからなかったが、梓は一切をこちらに委ねたまま、なにも言わなかった。 文太もまた、細かいことなどはもう何も考えられなかった。 ただ、傷つけないようにということだけを念じながら、梓に差し出されたゴムを装着した。 「痛かったら言って」 彼の皮膚にあてがい、何度か押し当てると、粘膜をかき分けていく心地よさに飲み込まれた。 梓は一瞬、息を呑んだが、苦痛は伴っていないらしい。 「はいった」 深くつながり、皮膚がぶつかり合う妙な冷たさをしばし味わう。 文太は息を吐いてからベッドに肘を突き、梓の耳元や頬、唇にキスを落とした。 「どうしよ、すごい幸せ……」 思わず呟くと、梓が笑った。 耳の中に吹き込む彼の吐息がこそばゆくて、文太も笑い返した。 「ゆっくり動くね」 探るように、腰をゆする。 彼はどうやら浅く挿入したまま、速い動作を繰り返すのが好きらしい。 「あー、あっ……あっ」 「気持ちいい?」 「ん……、あっ、はぁっ」 冷房が充分に効いているはずなのに、気づけば汗まみれだ。 動くごとに理性はすり減って、巨大な欲望に半分飲まれかけていた。 文太は動きを止め、深呼吸を数回繰り返すと、梓の頬をひと撫でした。 「ごめん、もうちょっと動くね」 合図とともに深く突いた瞬間、彼が短い息を吐きながら、衝撃を受け止めたのがわかった。 自転車で坂道を下るようなもので、もう制御など効くはずもない。 「まっ……はや、いっ、文、太——」 彼の声がぼんやりと滲むような、まろやかな余韻を残して響く。 彼の綺麗に浮き出た腹筋が、揺さぶるたびに白くぶれた。 「あっ、いく……いく、からっ」 本当は前を刺激してやりたいが、腰を掴むので精一杯だ。 ぼんやりと見下ろしていると、梓はやがて、自らの手で前を刺激し出した。 情けなさと興奮が、汗に溶けて落ち、彼の白い肌の上を滑り落ちる。 「梓さん、俺も……っ」 梓の胸に顔を押し付けながら、夢中で腰を打ちつけた。 叫ぶ彼の声は相変わらず遠いが、その息遣いだけは間近で感じられ、熱気がこもっている。 「あっ……」 先に梓が達したのがわかり、文太もすぐに後を追った。 しばらく梓の体にもたれたまま、熱が引くのを待つ。 うなじから耳の裏側、こめかみまでがすっかりと冷めてから、文太はようやく上体を起こした。
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