22. かっこ悪い言い訳

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「梓さんがそれ言います?」 「だって、来なかったから」 「この前も来ましたよ。来たけど帰ったんです」 「なんで?」 問われると途端に言葉に詰まって、文太は鼻を啜った。 目の前を自転車が通り抜ける。 俯いていても、好奇の視線が張り付いてきているのがわかって、居たたまれなかった。 「それに、ウェブサイトのメッセージフォームからメールも送りました……」 「きてない」 「送ったよ! 2回も!」 梓はポケットからスマートフォンを取り出すと、首を傾げながら画面をスクロールし出した。 人差し指の動きが止まり、その眉間に皺が寄る。 それからなぜか、ため息を吐かれてしまった。 「件名が『会いたいです』とか、迷惑メールだと思うだろ。一日何件来ると思ってんだよ、こういうやつ」 「え、そんな……」 「文太ですとか、簡単なやつにしてくれればすぐ気づいたのに」 文太はそれを聞いて、全身から力が抜けた。 どうやら、無視されていたわけではないらしい。 ほっとした途端、ふたたび涙が溢れて止まらなくなる。 「俺、無視されてると思って……。前にも勇気出して来てみたら、あの男といちゃついてたし。それに梓さん、なんか知らない人みたいで——俺、ほんとに自信なくなっちゃって」 「仕事の時は外面でいて当たり前だろ。それに、いちゃついてない」 「でもさっき、好きにさせてた……」 自分と梓との間に、契約があるわけではない。 彼の体はあくまで彼のもので、誰に好きにさせるかは、彼が決めることだ。 だから文太は、梓の対人関係においては深く追及しないでおこうと、頭では思っていた。 決して余裕ぶりたいわけではない。 子供じみた独占欲を滲ませでもしたら、彼が遠ざかってしまいそうな——そんな強迫観念からだった。
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