2. ヒュッテ霜月へようこそ

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「まー空気乾燥してるから体はあんま気になんないけど、頭痒くなるよね。梶川君のそれ、天然?」 耳たぶあたりに視線を感じて、文太は毛先のカールでできた輪に、人差し指を突っ込んだ。 「いや、ふつうにパーマです」 毛束が指に巻きついてくるような感触が癖になり、無意識にやってしまう仕草だった。 「そういう髪型似合うのってすごいよね。くるくるっていうか、ふわふわっていうか。俺がやったら確実に事故るやつだわ」 たしかに楠本のような童顔だと、今のような黒髪のミディアムヘアがいちばん似合うのかもしれない。 「背がでかくて顔が小さいから似合うのかな?」 楠本は、まるで大仏を前にした観光客かのように、こちらの頭から胸元まで、大げさに視線をずらした。 飛び抜けて大きいというわけではないが、小柄な楠本からすると、大きく見えるのだろうか。 おそらく、176cmの文太よりも10cmは低い。 プラスチックビーズを思わせる丸い目玉やちまちましながらも素早い動作は、どことなく小動物を連想させた。 「まみやんもでかいしさー。なんか今の子ってみんな顔ちっさくて背でかいよね。新人類って感じ?」 大した年齢差もないだろうに、新人類なんて大袈裟な——彼からこぼれたごく自然な線引きに違和感を覚えながらも、その慌ただしい動作に口を挟みそびれてしまった。
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