24. 冒険

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すると梓は背後から近づいてきて、顎を肩に乗せた。 「ほら、ドリア釜飯頼むんだろ」 「もたれますよ。くどいから」 「くどいのも好きなんだよ。おかげさまで、最近は冒険してるからな」 「いいよ、もうそういうの……」 自分と向き合っていることを「冒険」と例えられるのも、悲しみに追い打ちをかけた。 彼はそんな文太を気遣っているのかいないのか、顎の関節を鳴らして、注文を急かしてきた。 「ほら、貸せ」 しまいには画面を操作され、北海釜飯とドリア釜飯、二つの注文が完了した。 お届け時間の目安は1時間と書いてある。 すると背後から肩を掴まれ、押し倒されてしまった。 梓に覗き込まれても、文太は視線を合わせなかった。 「釜飯が来るまで1時間あるな」 「だから何なんですか」 梓はのしかかってくると、体をぴったりと密着させた。 それから文太の毛先に指先を絡めて巻き付けながら、穏やかな視線を注いでくる。 これは文太が些細なことで機嫌を損ねた時、たまに見せてくれるものだった。 このときばかりは彼からの愛情を一心に受け取っているような気がして、機嫌を直すのがつい名残惜しくなり、いつまでもぐずぐずと拗ね続けてしまう。 「ほら、機嫌直せ」 彼は文太の額を撫でながら、下半身を擦り付けるように、ゆっくり腰を動かした。 布越しに触れ合うごくわずかな刺激だけで、体はふたたび熱くなり、これ以上不機嫌を保つのが難しくなった。 「ずるいなぁ、ほんとに」 彼の下着を剥ぎ、片脚を抱え上げる。 梓はされるがままになりながら、薄笑いを浮かべていた。 「なにがずるいんだよ。しっかり勃たせておいて」 「梓さんがエッチなのが悪い……」 彼は声に出して笑ったが、文太が肌を弄ると、その笑みが消え、たちまち歪んでいく。 インターフォンが鳴るまで、2人はずっとベッドの上にいた。
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