3. 星降る夜に

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梓は早朝に写真を撮りに行っているらしく、いつも昼ごろに帰ってくると小屋のまわりをうろうろしていた。 昼から午後にかけて、文太たちスタッフが小屋で接客や食事の支度に追われている間は、補修や整備関連を、どうやら彼がしてくれているらしい。 岳はそんな彼を労って、従業員用の食事を彼にも提供したり、風呂を貸したり、たまにはこうして食事以外の差し入れもしているようだった。 今回、文太に使いを頼んだのも、岳なりの計らいに違いない。 ——梓とは、あれからまだ会話らしい会話をなにひとつしていないのだ。 彼は決して口数が多いほうではないが、無愛想というわけでもないらしい。 岳とは古い付き合いらしく雑談しているのをよく見かけるし、奈良は毎晩、梓のテントまで食事を届けに行っている。 一見、関わりがなさそうな楠本とだって、会えば挨拶はする。 つまり、文太だけが未だに——無視されているのだった。 厨房の扉が、やけに重く感じる。 覚悟を決めて外に出ると、頬に刃を当てられたような鋭さをもって、疾風が体当たりしてきた。 岳から借りたクロックスサンダルは、つま先は保護されているが、穴から風が吹き込んできて、分厚い靴下を履いていてもつま先が痺れてくる。 「さむ……」 文太は肩を怒らせながら、濃紺の帳のなかへと身を投じた。 自身の息の白さがやけに際立つ。 その白い塊は、吐いたそばから山の風にさらわれていき、瞬く間に散っていった。
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