4. ゆれる明かり

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「なに笑ってんですか……」 しかし、彼の無邪気な表情は決して乾いておらず、まだ熱っぽさがあった。 その愛らしい笑顔に気を取られていると、潤んだ目と赤く濡れた唇、笑い声から漏れる息遣いに——いつのまにかさらわれそうになる。 文太はポケットからアルミの包みを出して、彼の足元に供えるように置いた。 「これ、差し入れに来たんです」 「なに?」 「簡単に、ケーキ的なものを焼いたんです。梓さん、今日の救助で疲れてるだろうから、せめて甘いものでもって……」 そこまで言うと、急に羞恥のようなものが込み上げてきて、梓が包みを開けようとしているのも待たずに腰を上げた。 何に対しての羞恥なのだろう。羞恥を覚えるべきなのは、むしろ梓のほうなのに。 勢いよく立ち上がったせいで、フライシートの天井に頭をぶつけてしまい、テントが揺れた。 「まあ、全然疲れてなさそうでしたけどね!」 言い捨てて、前室から上半身を外に出した時、名を呼ばれた。 「文太」 振り返ると、梓がテントから身を乗り出していた。 それから、アルミホイルの包みを軽く掲げる。 「ありがと」 素直に礼を言われるとは思わなかったので、どうも調子が狂ってしまい、文太は口をもごもごさせながら踵を返した。 「いーえ!」 玄関口に回り込むと一気に力が抜けて、いつのまにかぶつけたらしい右足の小指が痛んだ。 負傷した末端が、どくどくと脈打つ。 息を吸うと鼻の奥が痛み、さきほどの残像に、目まぐるしく取り巻かれた。
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