7. 追憶の旅

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やがて、梓は追憶の旅からゆっくり戻ってきた。 そしてふと、文太の存在を思い出したのか、こちらを向くと——左の手のひらを差し出してくる。 意図がわからず、文太は差し出された梓の手を握った。 「なに」 「なにって、差し出されたから握りました」 次の瞬間、笑い声が響いて、文太は間違いに気づいた。 そして、猛烈に恥ずかしくなる。 「クッキーちょうだいって意味なんだけど」 そして今、足元に置かれたままになっていた包みの存在を思い出した。 「なんだよ! 一言いえばいいじゃないですか。もうほんと恥ずかしい……」 振り解こうとすると、力を込められた。 「梓さん、クッキー……」 梓はその手を繋いだまま、口を大きく開けた。 意図を読み間違えていないからしばらく観察してみるが、今度は大丈夫そうだ。 文太は片手で包みを開けると、そのひとつを彼の口に放ってやった。 「うま」 そしてまた、無垢に笑いながら、繋いだ手をいたずらに振る。 羞恥はまだ拭い切れないが、彼が笑って、文太自身を捉えていてくれることが嬉しかった。 ——これを無意識にやっているんだとしたら、本当にタチが悪い。 ため息をつきながらも、また新たなおやつのレシピを検索してみようと思った。
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