10. 誰でもいいなら

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「友達だったら、あんなにぴったり脚くっつけるかなぁ」 「ふたりとも長いからぶつかっちゃうんじゃない?」 楠本は気にせず、どんぶりを持ち上げてふたりの元へと運んでいった。 戻ってくると、カウンターに手をついてしばし時間を持て余し、やがて文太のほうを向いた。 「それにあのふたり、テント1張しか持ってきてないんですよ。さっき設営してんの見たけど」 楠本は、まだその話をしているのかと言わんばかりに口をぽっかり開けて、一瞬、天井を見上げた。 「いや、普通に軽量化のためでしょ。それぞれソロテント持ってくるより合理的じゃん」 「そうかなぁ……」 「ブンちゃん、そっちのほう意識しすぎなんじゃないの。いくら自分が梓さんのこと好きだからってさー」 梓の名前が出た時、肩が強張るのが自分でもわかった。 間抜けな声が出そうになるのをなんとか押し込めると、文太はカウンターに前屈みになった。 「なに言うんですかいきなり」 「だって毎日テントに通ってんじゃん。もうさ、その間、琉弥があからさまに動揺してて、めちゃ面白いんだよね。梓さん、琉弥からブンちゃんに乗り換えたんだ?」 「え! え……?」 さらりと出た奈良の名前に狼狽えてしまう。 彼はどうやら奈良と梓の関係にも、とうに気づいていたらしい。 「梓さんって、そんなにエッチうまいの?」 「いやいや、やってないですから」 「嘘だー。何かしらはやってるっしょ」 「やってません!」 楠本がにやつきながら片手で下品なゼスチャーを加えるものだから、つい声が大きくなってしまった。 文太がカウンターから離れると、今度は楠本のほうからまとわりついてきた。 彼の目は好奇に満ちて輝いている。こういう時は大抵、なんらかの情報を絞り出すまでは解放してくれない。
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